宗教改革の二欠点

藤井武

藤井武が訳したアドルフ・サフイルの言葉

宗教改革の大なる栄光に拘らず、その聖書の解釈について二つの欠点を見逃すことが出来ない。第一に彼等は時代を区別しなかった。「時を区別せよ、然らば凡ての困難は消滅するであらう」と既にアウガスチンも言うた。もし彼等が教会の時代とメシヤ王国の時代とを区別したならば、彼等は異端の故を以てセルヴエトスの死に処せらるるを承認することは出来なかつたであらう。何となれば教会には剣はない、剣はただ王国にのみあるから。第二に彼等は神の経綸に於けるユダヤ人の重要なる地位を明白に了解せず、また主の再臨を明白に見なかった(勿論ルーテルやカルビンが世界の漸進的改善を信じたとはいはない)。彼等は個人の救ひを説くを以て足れりとした。それは中心である。しかし凡て周囲を彼らは忘れた、即ち聖書に啓示せらるる神の全き計画である。之を忘れたるが為に、此世の哲学や科学に惑はされて、虚偽なる非聖書的思想がはびこるに至つたのである。

「旧約と新約」第四二号 一九二三年一二月