第一章

1ダビデの子(こ)イスラエルの王(わう)ソロモンの箴言(しんげん) 2こは人(ひと)に智慧(ちゑ)と訓誨(をしへ)とをしらしめ哲言(さときことば)を暁(さと)らせ 3さとき訓(をしえ)と公義(ただしき)と公平(こうへい)と正直(なほき)とをえしめ 4拙者(つたなきもの)にさとりを與(あた)へ少者(わかきもの)に知識(ちしき)と謹愼(つつしみ)とを得(え)させん爲(ため)なり 5智慧(ちゑ)ある者(もの)は之(これ)を聞(きき)て學(がく)にすすみ 哲者(さときもの)は智略(ちりやく)をうべし 6人(ひと)これによりて箴言(しんげん)と譬喩(たとへ)と智慧(ちゑ)ある者(もの)の言(ことば)とその隠語(いんご)とを悟(さと)らん 7ヱホバを畏(おそ)るるは知識(ちしき)の本(もと)なり 愚(おろか)なる者(もの)は智慧(ちゑ)と訓誨(をしへ)とを軽(かろ)んず 8我(わ)が子(こ)よ汝(なんぢ)の父(ちち)の敎(をしへ)をきけ 汝(なんぢ)の母(はは)の法(おきて)を棄(すつ)ることなかれ 9これ汝(なんぢ)の首(かうべ)の美(うるは)しき冠(かんむり)となり 汝(なんぢ)の項(くび)の妝飾(かざり)とならん 10わが子(こ)よ惡者(あしきもの)なんぢ誘(いざな)ふとも從(したが)ふことなかれ 11彼等(かれら)なんぢにむかひて請(こ)ふ われらと偕(とも)にきたれ 我儕(われら)まちぶせして人(ひと)の血(ち)を流(なが)し 無辜(つみなき)ものを故(ゆゑ)なきに伏(ふし)てねらひ 12陰府(よみ)のごとく彼等(かれら)を活(いき)たるままにて呑(のみ)み 壯健(すこやか)なる者(もの)を墳(はか)に下(くだ)る者(もの)のごとくになさん 13われら各樣(さまざま)のたふとき財貨(たから)をえ 奪(うば)ひ取(とり)たる物(もの)をもて我儕(われら)の家(いへ)に盈(みた)さん 14汝(なんぢ)われらと偕(とも)に籤(くじ)をひけ 我儕(われら)とともに一(ひとつ)の金嚢(かねぶくろ)を持(もつ)べしと云(いふ)とも 15我(わ)が子(こ)よ彼等(かれら)とともに途(みち)を歩(あゆ)むことなかれ 汝(なんぢ)の足(あし)を禁(とど)めてその路(みち)にゆくこと勿(なか)れ 16そは彼(かれ)らの足(あし)は惡(あく)に趨(はし)り 血(ち)を流(なが)さんとて急(いそ)げばなり 17(すべて鳥(とり)の目(め)の前(まへ)にて羅(あみ)を張(はる)は徒勞(いたづら)なり) 18彼等(かれら)はおのれの血(ち)のために埋伏(まちぶせ)し おのれの命(いのち)をふしてねらふ 19凡(すべ)て利(り)を貧(むさぼ)る者(もの)の途(みち)はかくの如(ごと)し 是(これ)その持主(もちぬし)をして生命(いのち)をうしなはしむるなり 20智慧(ちゑ)外(そと)に呼(よば)はり衢(ちまた)に其(その)聲(こゑ)をあげ 21熱閙(かまびす)しき所(ところ)にさけび 城市(まち)の門(もん)の口(くち)邑(まち)の中(なか)にその言(ことば)をのべていふ 22なんぢら拙(つたなき)者(もの)のつたなきを愛(あい)し 嘲笑者(あざけるもの)のあざけりを樂(たの)しみ 愚(おろか)なる者(もの)の知識(ちしき)を惡(にく)むは幾時(いつ)までぞや 23わが督斥(いましめ)にしたがひて心(こころ)を改(あらた)めよ 視(み)よわれ我(わ)が霊(れい)を汝(なんぢ)らにそそぎ 我(わ)が言(ことば)をなんぢらに示(しめ)さん 24われ呼(よび)たれども汝(なんぢ)らこたへず 手(て)を伸(のべ)たれども顧(かへりみ)る者(もの)なく 25かへつて我(わ)がすべての勸告(すすめ)をすて我(わ)が督斥(いましめ)を受(うけ)ざりしに由(よ)り 26われ汝(なんぢ)らが禍災(わざはひ)にあふとき之(これ)を笑(わら)ひ 汝(なんぢ)らの恐懼(おそれ)きたらんとき嘲(あざけ)るべし 27これは汝(なんぢ)らのおそれ颶風(はやて)の如(ごと)くきたり 汝(なんぢ)らのほろび颺風(つじかぜ)の如(ごと)くきたり 艱難(なやみ)とかなしみと汝(なんぢ)らにきたらん時(とき)なり 28そのとき彼等(かれら)われを呼(よ)ばん 然(さ)れどわれ應(こた)へじ 只管(ひたすら)に我(われ)を求(もと)めん されど我(われ)に遇(あは)じ 29かれら知識(ちしき)を憎(にく)み又(また)ヱホバを畏(おそ)るることを悦(よろこ)ばず 30わが勸(すすめ)に從(したが)はず凡(すべ)て我(わが)督斥(いましめ)をいやしめたるによりて 31己(おの)の途(みち)の果(み)を食(くら)ひおのれの策略(はかりごと)に飽(あく)べし 32拙(つたなき)者(もの)の違逆(そむき)はおのれを殺(ころ)し 愚(おろか)なる者(もの)の幸福(さいはひ)はおのれを滅(ほろぼ)さん 33されど我(われ)に聞(きく)ものは平穩(おだやか)に住(すま)ひかつ禍害(わざはひ)にあふ恐怖(おそれ)なくして安然(やすらか)ならん

第二章

1我(わ)が子(こ)よ汝(なんぢ)もし我(わ)が言(ことば)をうけ 我(わ)が誡命(いましめ)を汝(なんぢ)のこころに蔵(をさ)め 2斯(かく)て汝(なんぢ)の耳(みみ)を智慧(ちゑ)に傾(かたぶ)け汝(なんぢ)の心(こころ)をさとりにむけ 3もし知識(ちしき)を呼(よび)求(もと)め聰明(さとり)をえんと汝(なんぢ)の聲(こゑ)をあげ 4銀(ぎん)の如(ごと)くこれを探(さぐ)り 秘(かく)れたる寳(たから)の如(ごと)くこれを尋(たづ)ねば 5汝(なんぢ)ヱホバを畏(おそ)るることを暁(さと)り 神(かみ)を知(し)ることを得(う)べし 6そはヱホバは智慧(ちゑ)をあたへ 知識(ちしき)と聰明(さとり)とその口(みくち)より出(い)づればなり 7かれは義人(ただしきひと)のために聰明(さとり)をたくはへ 直(なほ)く行(あゆ)む者(もの)の盾(たて)となる 8そは公平(こうへい)の途(みち)をたもち その聖徒(せいと)の途(みち)すぢを守(まも)りたまへばなり 9斯(かく)て汝(なんぢ)はつひに公義(ただしき)と公平(こうへい)と正直(なほき)と一切(すべて)の善(よき)道(みち)を暁(さと)らん 10すなはち智慧(ちゑ)なんぢの心(こころ)にいり 知識(ちしき)なんぢの霊魂(たましひ)に樂(たの)しからん 11謹愼(つつしみ)なんぢを守(まも)り 聰明(さとり)なんぢをたもちて 12惡(あし)き途(みち)よりすくひ虚偽(いつはり)をかたる者(もの)より救(すく)はん 13彼等(かれら)は直(なほ)き途(みち)をはなれて幽暗(くら)き路(みち)に行(あゆ)み 14惡(あく)を行(おこな)ふを樂(たの)しみ 惡者(あしきもの)のいつはりを悦(よろこ)び 15その途(みち)はまがり その行爲(おこなひ)は邪曲(よこしま)なり 16聰明(さとり)はまた汝(なんぢ)を妓女(あそびめ)より救(すく)ひ 言(ことば)をもて諂(へつら)ふ婦(をんな)より救(すく)はん 17彼(かれ)はわかき時(とき)の侶(とも)をすて その神(かみ)に契約(けいやく)せしことを忘(わす)るるなり 18その家(いへ)は死(し)に下(くだ)り その途(みち)は陰府(よみ)に赴(おもむ)く 19凡(すべ)てかれにゆく者(もの)は歸(かへ)らず また生命(いのち)の途(みち)に達(いた)らざるなり 20聰明(さとり)汝(なんぢ)をたもちてよき途(みち)に行(あゆ)ませ 義人(ただしきひと)の途(みち)を守(まも)らしめん 21そは義人(ただしきひと)は地(ち)にながらへをり 完全(またき)者(もの)は地(ち)に止(とどま)らん 22されど惡者(あしきもの)は地(ち)より亡(ほろぼ)され悖逆(もとる)者(もの)は地(ち)より抜(ぬき)さらるべし

第三章

1我(わ)が子(こ)よわが法(おきて)を忘(わす)るるなかれ 汝(なんぢ)の心(こころ)にわが誡命(いましめ)をまもれ 2さらば此事(このこと)は汝(なんぢ)の日(ひ)をながくし生命(いのち)の年(とし)を延(の)べ平康(やすき)をなんぢに加(くは)ふべし 3仁慈(あはれみ)と眞實(まこと)とを汝(なんぢ)より離(はな)すことなかれ 之(これ)を汝(なんぢ)の項(くび)にむすび これを汝(なんぢ)の心(こころ)の碑(いしぶみ)にしるせ 4さらばなんぢ神(かみ)と人(ひと)との前(まへ)に恩寵(めぐみ)と好名(ほまれ)とを得(う)べし 5汝(なんぢ)こころを盡(つく)してヱホバに倚賴(よりたの)め おのれの聰明(さとり)に倚(よ)ることなかれ 6汝(なんぢ)すべての途(みち)にてヱホバをみとめよ さらばなんぢの途(みち)を直(なほ)くしたまふべし 7自(みづ)から看(み)て聰明(さとし)とする勿(なか)れ ヱホバを畏(おそ)れて惡(あく)を離(はな)れよ 8これ汝(なんぢ)の身(み)に良薬(くすり)となり汝(なんぢ)の骨(ほね)に滋潤(うるほひ)とならん 9汝(なんぢ)の貨財(たから)と汝(なんぢ)がすべての產物(なりいでもの)の初生(うひなり)をもてヱホバをあがめよ 10さらば汝(なんぢ)の倉庫(くら)はみちて餘(あま)り 汝(なんぢ)の酒醡(さかぶね)は新(あたら)しき酒(さけ)にて溢(あふ)れん 11我(わが)子(こ)よ汝(なんぢ)ヱホバの懲治(こらしめ)をかろんずる勿(なか)れ その譴責(いましめ)を受(う)くるを厭(いと)ふこと勿(なか)れ 12それヱホバはその愛(あい)する者(もの)をいましめたまふ あたかも父(ちち)のその愛(あい)する子(こ)を譴(いまし)むるが如(ごと)し 13智慧(ちゑ)を求(もと)め得(う)る人(ひと)および聰明(さとり)をうる人(ひと)は福(さいはひ)なり 14そは智慧(ちゑ)を獲(う)るは銀(ぎん)を獲(う)るに愈(まさ)りその利(り)は精金(せいきん)よりも善(よ)ければなり 15智慧(ちゑ)は眞珠(しんじゆ)よりも尊(たふと)し 汝(なんぢ)の凡(すべ)ての財貨(たから)も之(これ)と比(くら)ぶるに足(た)らず 16其(その)右(みぎ)の手(て)には長壽(ながきいのち)あり その左(ひだり)の手(て)には富(とみ)と尊貴(たふとき)とあり 17その途(みち)は樂(たの)しき途(みち)なり その徑(みち)すぢは悉(ことごと)く平康(やす)し 18これは執(と)る者(もの)には生命(いのち)の樹(き)なり これ持(もつ)ものは福(さいはひ)なり 19ヱホバ智慧(ちゑ)をもて地(ち)をさだめ 聰明(さとり)をもて天(てん)を置(すゑ)たまへり 20その知識(ちしき)によりて海洋(うみ)はわきいで 雲(くも)は露(つゆ)をそそぐなり 21我(わ)が子(こ)よこれらを汝(なんぢ)の眼(め)より離(はな)す勿(なか)れ 聰明(さとり)と謹愼(つつしみ)とを守(まも)れ 22然(さら)ばこれは汝(なんぢ)の霊魂(たましひ)の生命(いのち)となり汝(なんぢ)の項(くび)の妝飾(かざり)とならん 23かくて汝(なんぢ)やすらかに汝(なんぢ)の途(みち)をゆかん 又(また)なんぢの足(あし)つまづかじ 24なんぢ臥(ふす)とき怖(おそ)るるところあらず 臥(ふす)ときは酣(うま)く睡(ねむ)らん 25なんぢ猝然(にはか)なる恐懼(おそれ)をおそれず 惡者(あしきもの)の滅亡(ほろび)きたる時(とき)も之(これ)を怖(おそ)るまじ 26そはヱホバは汝(なんぢ)の倚賴(よりたの)むものにして汝(なんぢ)の足(あし)を守(まも)りてとらはれしめたまはざるべければなり 27汝(なんぢ)の手(て)善(ぜん)をなす力(ちから)あらば之(これ)を爲(な)すべき者(もの)に爲(な)さざること勿(なか)れ 28もし汝(なんぢ)に物(もの)あらば汝(なんぢ)の鄰(となり)に向(むか)ひ 去(さり)て復(また)來(きた)れ明日(あす)われ汝(なんぢ)に予(あた)へんといふなかれ 29汝(なんぢ)の鄰(となり)なんぢの傍(かたはら)に安(やす)らかに居(を)らば之(これ)にむかひて惡(あく)を謀(はか)ること勿(なか)れ 30人(ひと)もし汝(なんぢ)に惡(あく)を爲(な)さずば故(ゆゑ)なく之(これ)と爭(あらそ)ふこと勿(なか)れ 31暴虐(しへたぐる)人(ひと)を羨(うらや)むことなく そのすべての途(みち)を好(よし)とすることなかれ 32そは邪曲(よこしま)なる者(もの)はヱホバに惡(にく)まるればなり されど義者(ただしきもの)はその親(したし)き者(もの)とせらるべし 33ヱホバの呪詛(のろひ)は惡者(あしきもの)の家(いへ)にあり されど義者(ただしきもの)の室(いへ)はかれにめぐまる 34彼(かれ)は嘲笑者(あざけるもの)をあざけり 謙(へりくだ)る者(もの)に恩惠(めぐみ)をあたへたまふ 35智者(さときもの)は尊榮(たふとき)をえ 愚(おろか)なる者(もの)は羞辱(はぢ)之(これ)をとりさるべし

第四章

1小子(こども)等(ら)よ父(ちち)の訓(をしへ)をきけ 聰明(さとり)を知(しら)んために耳(みみ)をかたむけよ 2われ善(よき)敎(をしへ)を汝(なんぢ)らにさづく わが律(おきて)を棄(す)つることなかれ 3われも我(わ)が父(ちち)には子(こ)にして 我(わ)が母(はは)の目(め)には獨(ひとり)の愛子(いとほしご)なりき 4父(ちち)われを敎(をし)へていへらく我(わ)が言(ことば)を汝(なんぢ)の心(こころ)にとどめ わが誡命(いましめ)をまもれ 然(さ)らば生(いく)べし 5智慧(ちゑ)をえ聰明(さとり)をえよ これを忘(わす)るるなかれ また我(わ)が口(くち)の言(ことば)に身(み)をそむくるなかれ 6智慧(ちゑ)をすつることなかれ彼(かれ)なんぢを守(まも)らん 彼(かれ)を愛(あい)せよ彼(かれ)なんぢを保(たも)たん 7智慧(ちゑ)は第一(だいいち)なるものなり 智慧(ちゑ)をえよ 凡(すべ)て汝(なんぢ)の得(え)たる物(もの)をもて聰明(さとり)をえよ 8彼(かれ)を尊(たふと)べ さらば彼(かれ)なんぢを高(たか)く擧(あ)げん もし彼(かれ)を懐(いだ)かば彼(かれ)汝(なんぢ)を尊榮(たふと)からしめん 9かれ美(うるは)しき飾(かざり)を汝(なんぢ)の首(かうべ)に置(お)き 榮(さかえ)の冠弁(かんむり)を汝(なんぢ)に予(あた)へん 10我(わ)が子(こ)よきけ 我(わ)が言(ことば)を納(い)れよ さらば汝(なんぢ)の生命(いのち)の年(とし)おほからん 11われ智慧(ちゑ)の道(みち)を汝(なんぢ)に敎(をし)へ義(ただ)しき徑(みち)筋(すぢ)に汝(なんぢ)を導(みちび)けり 12歩(ある)くとき汝(なんぢ)の歩(あゆみ)は艱(なや)まず 趨(はし)るときも躓(つまづ)かじ 13堅(かた)く訓誨(をしへ)を執(と)りて離(はな)すこと勿(なか)れ これを守(まも)れ これは汝(なんぢ)の生命(いのち)なり 14邪曲(よこしま)なる者(もの)の途(みち)に入(い)ることなかれ 惡者(あしきもの)の路(みち)をあやむこと勿(なか)れ 15これを避(さけ)よ 過(すぐ)ること勿(なか)れ 離(はな)れて去(さ)れ 16そは彼等(かれら)は惡(あく)を爲(な)さざれば睡(ねむ)らず 人(ひと)を躓(つまづ)かせざればいねず 17不義(ふぎ)のパンを食(くら)ひ暴虐(しへたげ)の酒(さけ)を飮(の)めばなり 18義者(ただしきもの)の途(みち)は旭光(あさひ)のごとし いよいよ光輝(かがやき)をまして晝(ひる)の正午(もなか)にいたる 19惡者(あしきもの)の途(みち)は幽冥(くらやみ)のごとし 彼(かれ)らはその蹟(つまづ)くもののなになるを知(しら)ざるなり 20わが子(こ)よ我(わ)が言(ことば)をきけ 我(わ)が語(かた)るところに汝(なんぢ)の耳(みみ)を傾(かたぶ)けよ 21之(これ)を汝(なんぢ)の目(め)より離(はな)すこと勿(なか)れ 汝(なんぢ)の心(こころ)のうちに守(まも)れ 22是(こ)は之(これ)を得(う)るものの生命(いのち)にしてまたその全體(ぜんたい)の良薬(くすり)なり 23すべての操守(まもる)べき物(もの)よりもまさりて汝(なんぢ)の心(こころ)を守(まも)れ そは生命(いのち)の流(ながれ)これより出(いづ)ればなり 24虚偽(いつはり)の口(くち)を汝(なんぢ)より棄(すつ)さり 惡(あし)き口唇(くちびる)を汝(なんぢ)より遠(とほ)くはなせ 25汝(なんぢ)の目(め)は正(ただし)く視(み) 汝(なんぢ)の眼瞼(まなぶた)は汝(なんぢ)の前(まへ)を眞直(ますぐ)に視(み)るべし 26汝(なんぢ)の足(あし)の徑(みち)をかんがへはかり 汝(なんぢ)のすべての道(みち)を直(なほ)くせよ 27右(みぎ)にも左(ひだり)にも偏(かたよ)ること勿(なか)れ汝(なんぢ)の足(あし)を惡(あく)より離(はな)れしめよ

第五章

1我(わ)が子(こ)よわが智慧(ちゑ)をきけ 汝(なんぢ)の耳(みみ)をわが聰明(さとり)に傾(かたぶ)け 2しかしてなんぢ謹愼(つつしみ)を守(まも)り汝(なんぢ)の口唇(くちびる)に知識(ちしき)を保(たも)つべし 3娼妓(あそびめ)の口唇(くちびる)は蜜(みつ)を滴(したた)らし 其(その)口(くち)は脂(あぶら)よりも滑(なめらか)なり 4されど其(その)終(をはり)は茵蔯(いんらん)の如(ごと)くに苦(にが)く兩刃(もろは)の劍(つるぎ)の如(ごと)くに利(するど)し 5その足(あし)は死(し)に下(くだ)り その歩(あゆみ)は陰府(よみ)に趣(おもむ)く 6彼(かれ)は生命(いのち)の途(みち)に入(い)らず 其(その)徑(みち)はさだかならねども自(みずか)ら之(これ)を知(しら)ざるなり 7小子(こども)等(ら)よいま我(われ)にきけ 我(わ)が口(くち)の言(ことば)を棄(す)つる勿(なか)れ 8汝(なんぢ)の途(みち)を彼(かれ)より遠(とほ)く離(はな)れしめよ 其(その)家(いへ)の門(かど)に近(ちか)づくことなかれ 9恐(おそら)くは汝(なんぢ)の榮(さかえ)を他人(たにん)にわたし 汝(なんぢ)の年(とし)を憐憫(あはれみ)なき者(もの)にわたすにいたらん 10恐(おそら)くは他人(たにん)なんぢの資財(たから)によりて盈(みた)され 汝(なんぢ)の勞苦(はたらき)は他人(たにん)の家(いへ)にあらん 11終(をはり)にいたりて汝(なんぢ)の身(み)なんぢの體(からだ)亡(ほろ)ぶる時(とき)なんぢ泣(なき)悲(かなし)みていはん 12われ敎(をしへ)をいとひ 心(こころ)に譴責(いましめ)をかろんじ 13我(わ)が師(し)の聲(こゑ)をきかず 我(われ)を敎(をし)ふる者(もの)に耳(みみ)を傾(かたぶ)けず 14あつまりの中(なか)會衆(くわいしう)のうちにてほとんど諸(もろもろ)の惡(あく)に陷(おちい)れりと 15汝(なんぢ)おのれの水溜(みづため)より水(みづ)を飮(の)み おのれの泉(いづみ)より流(なが)るる水(みづ)をのめ 16汝(なんぢ)の流(ながれ)をほかに溢(あふ)れしめ 汝(なんぢ)の河(かは)の水(みづ)を衢(ちまた)に流(なが)れしむべけんや 17これを自己(おのれ)に歸(き)せしめ 他人(たにん)をして汝(なんぢ)と偕(とも)にこに與(あづか)らしむること勿(なか)れ 18汝(なんぢ)の泉(いづみ)に福祉(さいはひ)を受(うけ)しめ 汝(なんぢ)の少(わか)き時(とき)の妻(つま)を樂(たの)しめ 19彼(かれ)は愛(うつく)しき麀(めじか)のごとく美(うるは)しき鹿(しか)の如(ごと)し その乳房(ちぶさ)をもて常(つね)にたれりとし その愛(あい)をもて常(つね)によろこべ 20我(わが)子(こ)よ何(いか)なればあそびめをたのしみ 淫婦(いんぷ)の胸(むね)を懐(いだ)くや 21それ人(ひと)の途(みち)はヱホバの目(め)の前(まへ)にあり 彼(かれ)はすべて其(その)行爲(おこなひ)を量(はか)りたまふ 22惡者(あしきもの)はおのれの愆(とが)にとらへられ その罪(つみ)の繩(なは)に繋(つなが)る 23彼(かれ)は訓誨(をしへ)なきによりて死(しに) その多(おほ)くの愚(おろか)なることに由(よ)りて亡(ほろ)ぶべし

第六章

1我(わが)子(こ)よ汝(なんぢ)もし朋友(とも)のために保證(うけあひ)をなし 他人(たにん)のために汝(なんぢ)の手(て)を拍(うた)ば 2汝(なんぢ)その口(くち)の言(ことば)によりてわなにかかり その口(くち)の言(ことば)によりてとらへらるるなり 3我(わが)子(こ)よ汝(なんぢ)友(とも)の手(て)に陷(おちい)りしならば斯(かく)して自(みづか)ら救(すく)へ すなはち往(ゆき)て自(みづか)ら謙(へりく)だり只管(ひたすら)なんぢの友(とも)に求(もと)め 4汝(なんぢ)の目(め)をして睡(ねむ)らしむることなく 汝(なんぢ)の眼瞼(まぶた)をして閉(とぢ)しむること勿(なか)れ 5かりうどの手(て)より鹿(しか)ののがるるごとく 鳥(とり)とる者(もの)の手(て)より鳥(とり)ののがるる如(ごと)くして みづからを救(すく)へ 6惰者(もの)よ蟻(あり)にゆき其(その)爲(な)すところを觀(み)て智慧(ちゑ)をえよ 7蟻(あり)は首領(かしら)なく有司(つかさ)なく君主(きみ)なけれども 8夏(なつ)のうちに食(しよく)をそなへ 収穫(かりいれ)のときに糧(かて)を斂(をさ)む 9惰者(もの)よ汝(なんぢ)いづれの時(とき)まで臥(ふし)息(やす)むや いづれの時(とき)まで睡(ねむ)りて起(おき)ざるや 10しばらく臥(ふ)ししばらく睡(ねむ)り 手(て)を叉(こまぬ)きてまた片時(しばらく)やすむ 11さらば汝(なんぢ)の貧窮(まづしき)は盗人(ぬすびと)の如(ごと)くきたり汝(なんぢ)の缺乏(ともしき)は兵士(つはもの)の如(ごと)くきたるべし 12邪曲(よこしま)なる人(ひと)あしき人(ひと)は虚偽(いつはり)の言(ことば)をもて事(こと)を行(おこな)ふ 13彼(かれ)は眼(め)をもて眴(めくば)せし 脚(あし)をもてしらせ 指(ゆび)をもて示(しめ)す 14その心(こころ)に虚偽(いつはり)をたもち 常(つね)に惡(あく)をはかり 爭端(あらそひ)を起(おこ)す 15この故(ゆゑ)にその禍害(わざはひ)にはかに來(きた)り 援助(たすけ)なくして立刻(たちまち)に敗(やぶ)らるべし 16ヱホバの憎(にく)みたまふもの六(むつ)あり 否(いな)その心(こころ)に嫌(きら)ひたまふもの七(ななつ)あり 17即(すなは)ち驕(たかぶ)る目(め)いつはりをいふ舌(した) つみなき人(ひと)の血(ち)を流(なが)す手(て) 18惡(あし)き謀計(はかりごと)をめぐらす心(こころ) すみやかに惡(あく)に趨(はし)る足(あし) 19詐僞(いつはり)をのぶる證(あかし)人(ひと) および兄弟(きやうだい)のうちに爭端(あらそひ)をおこす者(もの)なり 20我(わが)子(こ)よ汝(なんぢ)の父(ちち)の誡命(いましめ)を守(まも)り 汝(なんぢ)の母(はは)の法(おきて)を棄(すつ)る勿(なか)れ 21常(つね)にこれを汝(なんぢ)の心(こころ)にむす び之(これ)をなんぢの頸(くび)に佩(おび)よ 22これは汝(なんぢ)のゆくとき汝(なんぢ)をみちびき 汝(なんぢ)の寝(いぬ)るとき汝(なんぢ)をまもり 汝(なんぢ)の寤(さむ)るとき汝(なんぢ)とかたらん 23それ誡命(いましめ)は燈火(ともしび)なり 法(おきて)は光(ひかり)なり 敎訓(をしへ)の懲治(こらしめ)は生命(いのち)の道(みち)なり 24これは汝(なんぢ)をまもりて惡(あし)き婦(をんな)よりまぬかれしめ 汝(なんぢ)をたもちて淫婦(いんぷ)の舌(した)の諂媚(へつらひ)にまどはされざらしめん 25その艶美(うるはしき)を心(こころ)に戀(した)ふことなかれ その眼瞼(まなぶた)に捕(とら)へらるること勿(なか)れ 26それ娼妓(あそびめ)のために人(ひと)はただ僅(わづか)に一撮(ひとつまみ)の糧(かて)をのこすのみにいたる 又(また)淫婦(いんぷ)は人(ひと)の尊(たふと)き生命(いのち)を求(もと)むるなり 27人(ひと)は火(ひ)を懐(ふところ)に抱(いだ)きてその衣(ころも)を焚(やか)れざらんや 28人(ひと)は熱(あつさ)火(ひ)を踏(ふみ)て其(その)足(あし)を焚(やか)れざらんや 29その隣(となり)の妻(つま)と姦淫(かんいん)をおこなふ者(もの)もかくあるべし 凡(すべ)て之(これ)に捫(さは)る者(もの)は罪(つみ)なしとせられず 30竊(ぬす)む者(もの)もし饑(うゑ)しときに其(その)饑(うゑ)を充(みた)さん爲(ため)にぬすめるならば人(ひと)これを藐(かろん)ぜじ 31もし捕(とら)へられなばその七倍(しちばい)を償(つくの)ひ其(その)家(いへ)の所有(もちもの)をことごとく出(いだ)さざるべからず 32婦(をんな)と姦淫(かんいん)をおこなふ者(もの)は智慧(ちゑ)なきなり 之(これ)を行(おこな)ふ者(もの)はおのれの霊魂(たましひ)を亡(ほろぼ)し 33傷(きず)と陵辱(はづかしめ)とをうけて其(その)恥(はぢ)を雪(すす)ぐこと能(あた)はず 34妒忌(ねたみ)その夫(おつと)をして忿怒(いかり)をもやさしむればその怨(うらみ)を報(むく)ゆるときかならず寛(ゆる)さじ 35いかなる贖(あがなひ)物(もの)をも顧(かへり)みず 衆多(おほく)の饋物(おくりもの)をなすともやはらがざるべし

第七章

1我(わが)子(こ)よわが言(ことば)をまもり我(わ)が誡命(いましめ)を汝(なんぢ)の心(こころ)にたくはへよ 2我(わ)が誡命(いましめ)をまもりで生命(いのち)をえよ 我(わが)法(おきて)を守(まも)ること汝(なんぢ)の眸子(ひとみ)を守(まも)るが如(ごと)くせよ 3これを汝(なんぢ)の指(ゆび)にむすび これを汝(なんぢ)の心(こころ)の碑(ひ)に銘(しる)せ 4なんぢ智慧(ちゑ)にむかひて汝(なんぢ)はわが姉妹(しまい)なりといひ 明理(さとり)にむかひて汝(なんぢ)はわが友(とも)なりといへ 5さらば汝(なんぢ)をまもりて淫婦(いんぷ)にまよはざらしめ 言(ことば)をもて媚(こぶ)る娼妓(あそびめ)にとほざからしめん 6われ我(わが)室(いへ)の牖(まど)により檑子(れんじ)よりのぞきて 7拙(つたな)き者(もの)のうち幼弱者(わかきもの)のうちに一人(ひとり)の智慧(ちゑ)なき者(もの)あるを觀(み)たり 8彼(かれ)衢(ちまた)をすぎ婦(をんな)の門(かど)にちかづき其(その)家(いへ)の路(みち)にゆき 9黄昏(たそがれ)に半宵(よひ)に夜半(よは)に黑暗(くらやみ)の中(なか)にあるけり 10時(とき)に娼妓(あそびめ)の衣(ころも)を着(き)たる狡(さかし)らなる婦(をんな)かれにあふ 11この婦(をんな)は譁(さわが)しくしてつつしみなく 其(その)足(あし)は家(いへ)に止(とどま)らず 12あるときは衢(ちまた)にあり 或(ある)時(とき)はひろばにあり すみずみにたちて人(ひと)をうかがふ 13この婦(をんな)かれをひきて接吻(くちつけ)し恥(はぢ)しらぬ面(かほ)をもていひけるは 14われ酬恩祭(しうおんさい)を献(ささ)げ今日(けふ)すでにわが誓願(ちかひ)を償(はた)せり 15これによりて我(われ)なんぢを迎(むか)へんとていで 汝(なんぢ)の面(かほ)をたづねて汝(なんぢ)に逢(あ)へり 16わが榻(とこ)には美(うるは)しき褥(しとね)およびエジプトの文枲(あやぬの)をしき 17沒藥(もつやく)蘆薈(ろくわひ)桂皮(けいひ)をもて我(わ)が榻(とこ)にそそげり 18來(きた)れわれら詰朝(よのあくる)まで情(じやう)をつくし愛(あい)をかよはして相(あひ)なぐさめん 19そは夫(をつと)は家(いへ)にあらず遠(とほ)く旅立(たびだち)して 20手(て)に金嚢(かねぶくろ)をとれり 望月(もちづき)ならでは家(いへ)に歸(かへ)らじと 21多(おほく)の婉言(なまめきたることば)をもて惑(まどは)し口唇(くちびる)の諂媚(へつらひ)をもて誘(いざな)へば 22わかき人(ひと)ただちにこれに隨(したが)へり あだかも牛(うし)の宰地(ほふりば)にゆくが如(ごと)く 愚(おろか)なる者(もの)の桎梏(あしかせ)をかけらるる爲(ため)にゆくが如(ごと)し 23遂(つひ)には矢(や)その肝(きも)を刺(さ)さん 鳥(とり)の速(すみや)かに羅(あみ)にいりてその生命(いのち)を喪(うしな)ふに至(いた)るを知(しら)ざるがごとし 24小子等(こどもら)よいま我(われ)にきけ 我(わ)が口(くち)の言(ことば)に耳(みみ)を傾(かたむ)けよ 25なんぢの心(こころ)を淫婦(いんぷ)の道(みち)にかたむくること勿(なか)れ またこれが徑(みち)に迷(まよ)ふこと勿(なか)れ 26そは彼(かれ)は多(おほく)の人(ひと)を傷(きず)つけて仆(たふ)せり 彼(かれ)に殺(ころ)されたる者(もの)ぞ多(おほ)かる 27その家(いへ)は陰府(よみ)の途(みち)にして死(し)の室(しつ)に下(くだ)りゆく

第八章

1智慧(ちゑ)は呼(よば)はらざるか 聰明(さとり)は聲(こゑ)を出(いだ)さざるか 2彼(かれ)は路(みち)のほとりの高處(たかきところ)また街衢(ちまた)のなかに立(た)ち 3邑(まち)のもろもろの門(かど) 邑(まち)の口(くち)および門々(かどかど)の入(いり)口(くち)にて呼(よば)はりいふ 4人々(ひとびと)よわれ汝(なんぢ)をよび 我(わ)が聲(こゑ)をもて人(ひと)の子等(こら)をよぶ 5拙(つたな)き者(もの)よなんぢら聰明(さとり)に明(あきら)かなれ 愚(おろか)なる者(もの)よ汝(なんぢ)ら明(あきら)かなる心(こころ)を得(え)よ 6汝(なんぢ)きけ われ善事(よきこと)をかたらん わが口唇(くちびる)をひらきて正(ただしき)事(こと)をいださん 7我(わ)が口(くち)は眞實(まこと)を述(の)べ わが口唇(くちびる)はあしき事(こと)を憎(にく)むなり 8わが口(くち)の言(ことば)はみな義(ただ)し そのうちに虚偽(いつはり)と奸邪(よこしま)とあることなし 9是(これ)みな智(さとき)者(もの)の明(あきら)かにするところ 知識(ちしき)をうる者(もの)の正(ただし)とするところなり 10なんぢら銀(ぎん)をうくるよりは我(わ)が敎(をしへ)をうけよ 精金(せいきん)よりもむしろ知識(ちしき)をえよ 11それ智慧(ちゑ)は眞珠(しんじゆ)に愈(まさ)れり 凡(すべて)の寳(たから)も之(これ)に比(くら)ぶるに足(た)らず 12われ智慧(ちゑ)は聰明(さとり)をすみかとし 知識(ちしき)と謹愼(つつしみ)にいたる 13ヱホバを畏(おそ)るるとは惡(あく)を憎(にく)むことなり 我(われ)は傲慢(たかぶり)と驕奢(おごり) 惡(あしき)道(みち)と虚偽(いつはり)の口(くち)とを憎(にく)む 14謀略(はかりごと)と聰明(さとり)は我(われ)にあり 我(われ)は了知(れうち)なり 我(われ)は能力(ちから)あり 15我(われ)に由(より)て王(わう)者(しや)は政(まつりごと)をなし 君(きみ)たる者(もの)は義(ただ)しき律(おきて)をたて 16我(われ)によりて主(しゆ)たる者(もの)および牧伯(つかさ)たちなど凡(すべ)て地(ち)の審判人(さばきびと)は世(よ)ををさむ 17われを愛(あい)する者(もの)は我(われ)これを愛(あい)す 我(われ)を切(せち)に求(もと)むるものは我(われ)に遇(あは)ん 18富(とみ)と榮(さかえ)とは我(われ)にあり 貴(たふと)き寳(たから)と公義(ただしき)とも亦(また)然(しか)り 19わが果(み)は金(きん)よりも精金(せいきん)よりも愈(まさ)り わが利(り)は精銀(せいぎん)よりもよし 20我(われ)は義(ただ)しき道(みち)にあゆみ 公平(こうへい)なる路徑(みちすぢ)のなかを行(あゆ)む 21これ我(われ)を愛(あい)する者(もの)に貨財(たから)をえさせ 又(また)その庫(くら)を充(みた)しめん爲(ため)なり 22ヱホバいにしへ其(その)御(み)わざをなしそめたまへる前(さき)に その道(みち)の始(はじめ)として我(われ)をつくりたまひき 23永遠(えいゑん)より元始(はじめ)より地(ち)の有(あら)ざりし前(さき)より我(われ)は立(たて)られ 24いまだ海洋(うみ)あらず いまだ大(おほい)なるみづの泉(いづみ)あらざりしとき我(われ)すでに生(うま)れ 25山(やま)いまださだめられず 陵(をか)いまだ有(あら)ざりし前(さき)に我(われ)すでに生(うま)れたり 26即(すなは)ち神(かみ)いまだ地(ち)をも野(の)をも地(ち)の塵(ちり)の根元(もと)をも造(つく)り給(たま)はざりし時(とき)なり 27かれ天(てん)をつくり海(うみ)の面(おもて)に穹蒼(おほぞら)を張(はり)たまひしとき我(われ)かしこに在(あ)りき 28彼(かれ)うへに雲氣(そら)をかたく定(さだ)め 淵(わだ)の泉(いづみ)をつよくならしめ 29海(うみ)にその限界(かぎり)をたて 水(みづ)をしてその岸(きし)を踰(こ)えざらしめ また地(ち)の基(もとゐ)を定(さだ)めたまへるとき 30我(われ)はその傍(かたはら)にありて創造者(つくりて)となり 日々(ひび)に欣(よろこ)び恒(つね)にその前(まへ)に樂(たのし)み 31その地(ち)にて樂(たのし)み又(また)世(よ)の人(ひと)を喜(よろこ)べり 32されば小子等(こどもら)よ いま我(われ)にきけ わが道(みち)をまもる者(もの)は福(さいは)ひなり 33敎(をしへ)をききて智慧(ちゑ)をえよ 之(これ)を棄(すつ)ることなかれ 34凡(おほよ)そ我(われ)にきき 日々(ひび)わが門(もん)の傍(かたはら)にまち わが戸口(かど)の柱(はしら)のわきにたつ人(ひと)は福(さいは)ひなり 35そは我(われ)を得(う)る者(もの)は生命(いのち)をえ ヱホバより恩寵(めぐみ)を獲(う)ればなり 36我(われ)を失(うしな)ふものは自己(おのれ)の生命(いのち)を害(そこな)ふ すべて我(われ)を惡(にく)むものは死(し)を愛(あい)するなり